フェアトレード
慶應中等部の2024年の問題です。
「発展途上国の人々の生活が成り立つように「公正な価格」で取引された商品」にはどの認証マークがついていますか。
という問題が出題されました。
正解はわかりますか?
実際の入試問題では、認証マークの絵を選ぶ問題でした。
正解は「フェアトレード」の認証マークです。
そして、次の問題は
「商品に認証マークが付いていると、消費者はそれがどのような商品であるのかを知ることができます。では、その商品を売る企業にとって、認証マークを付けることにはどのような意味があると考えますか。20字以上50字以内で答えなさい。」
というものでした。
この問題、生徒さんに演習してもらうと、意外なほど正解できません。
なぜでしょうか?
フェアトレードの意味がわからない
フェアトレードの意味がわかっていない生徒さんも少なくありません。
先進国は発展途上国の農産物・水産物・木材・地下資源等を輸入し、加工しています。
当然、原材料を加工するのですから、製品の方が値段が高くなります。
つまり、金額でいえば先進国の方が儲かるということです。
ところで、先進国はできるだけ安く原料を輸入したいと考えています。
そこで、「買い叩く」のです。
発展途上国では他に産業がありません。
「買い叩かれ」ても売るしかありません。
その結果、発展途上国の人々の生活はどんどん貧しくなります。
また、子どもも学校に行くことができず、児童労働などの問題も起こってきます。
つまり、先進国の豊かな生活は発展途上国の人々の犠牲のもとに成り立っています。
ちなみに、以下のものは2019年のセンター試験・地理Bの問題です。
この中で、「生産者」が発展途上国の農家です。
彼らがコーヒ豆を生産してもらえるのは0.14ドルです。
加工業者が選択肢にある「フードシステムを統括する拠点」です。
有名な企業ではネスカフェ、UCCなどがあります。
そして、ここが一番利益を得ているのがわかりますか?
(この問題の解答は④。ネスカフェもUCCも生産国にはありません。)
これらの状況を改善するために出てきたのが「フェアトレード」です。
「公正な価格」で取引することで、発展途上国の人々の生活も成り立ちます。
もちろん、我々消費者とすれば製品の価格が高くなります。
それでも、世界の状況を改善するために「フェアトレード」マークがついている製品を
買うことで、フェアトレードが広まり、貧困・児童労働などの問題が改善していくのです。
ちなみに、授業で生徒さんに紹介する動画を載せておきます。
ぜひご覧ください。
記述ができない
次に問題になるのは、記述ができない点です。
問われているのはなんでしょう?
「企業にとって、どのような意味があるのか?」
です。
ところが、少なくない生徒さんがフェアトレードの意味を書いてしまいます。
例えば
「公正な価格で取引をしていること。」
です。これは全く問われていることに答えていません。
また、
「消費者が公正な価格で取引している企業だと知ることができる。」
これは、消費者が主語になってしまっています。
問われているのは「企業にとってどのような意味があるのか?」です。
つまり、企業にとってどのようないい点があるのか?です。
企業がフェアトレードを行うとどのようなことが起こるでしょうか?
(実際にはそんな簡単ではないかもしれませんが)
公正な価格で取引をすることで、発展途上国の人々の生活水準が向上します。
では、そのような努力をしている企業の製品とそうでない企業の製品
どちらがたくさん売れるでしょうか?
それは努力をしている企業でしょう。
イメージが良くなりますよね。
これが良い点です。
解答例:
「発展途上国の貧困問題に取り組んでいる企業というよいイメージを広めることができる。」
このような方向でいいでしょう。
最後に
フェアトレードの意味がわからない、
あるいは、フェアトレードの意味を説明してくれと問われた時にどう回答すればいいのかわからない、
という方は問題を参考にしてください。
今回の慶應中等部の問題でいえば、
「発展途上国の人々の生活が成り立つように公正な価格で取引すること」
でいいですね。
ちなみに、2009年のセンター試験・地理Aでは
「フェアトレードとは、先進国が発展途上国の農産加工品などを適正な価格で直接輸入することであり、現地の人々の生活水準の向上をめざす貿易である。」
という選択肢がありました。
小学生が大学受験の問題を見る必要はないですし、
高校生が中学受験の問題まで見る必要はありません。
ただ、このようなところまで意識して復習することで
「単語の意味」を知り、記述する問題に対応することができます。
参考にしてください。